ユリヤ商会

2015/09/05 土曜日

こないだ、履歴書を送った、と書いた際、
その切手を写真に収めていて、
自分が切手好きだったことを思い出した。

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(特に好きな切手ばかりをアルバムに貼った。
ら、剥がせなくなった。なにも考えず、ばかだった。いいけど。)

通っていた大学の近くのアーケード街に、ユリヤ商会というお店があった。

おもちゃ屋なのだけれども、ずらずらと歩道まで並べられたおもちゃのほか、
店の外壁には切手も陳列されていた。

その並びのパン屋でバイトしていて(カスタード炊いていたのとはまた別のパン屋)、
毎日のように前を通りながら、
店内に入ったのは、たぶん3回生を過ぎてからだったと思う。

それくらいには、入るのをためらうお店ながら、一度訪ねてしまえば、実に居心地の良い場所だった。

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たしか最初は、
表に出された古切手の詰め合わせが、
よく見れば可愛らしい動物の柄だったりすることに気付き、
それに釣られるようにして入ったのだと思う。

おそるおそる店内に入り、お店のおじいちゃんに、
「表の、あの、切手の詰め合わせをください」とか言うたのだと思うけど、それではすまなかった。

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おもちゃだらけの店だったけど、
中に入ると左側の一角がカウンターになっていた。
じいちゃんはその中に立ち、
背後の棚にずらり並ぶファイルのひとつを取り出し、どうぞご覧ください、と差し出した。

ファイルは、国別五十音、動物、人物、などに分かれていたと思う。
そこからは、切手の底なし沼で、
毎度じいちゃんの手引きにより、
ピンセットを片手に、1時間はそこから離れられなかった。
冬場はちかくでストーブもたかれていた。

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さまざまな切手を見せてもらううち、
わたしは、自分がポーランドの切手が特に好きだということに気づいた。
それからは、店を訪ねる度に、とりあえず 国別 P のファイルから見せてもらっていたように思う。

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ぽつぽつ通う中で知ったことだけど、
このユリヤ商会には、もうひとりじいちゃんがいて、そちらはおもちゃ担当とのことだった。
兄弟なのかな、と思いながら、聞かないままだった。

あと、何円分だったか、忘れたけれど、
ある程度まとめて買った時は、
じいちゃんが隅から箱を出してきて、
「どれか一冊どうぞ」と、文庫をくれた。
何冊か、もらったのだけど、
何をもらったのかがあまり定かでない。
唯一、野菊の墓」だけは、確かにもらったことを覚えている。
のちのち、木下恵介が映画を撮っていることを知り、いつか観たいな、と思いながら、未見のままでいる。

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最後に、ユリヤ商会を訪ねたのは、たぶん、22か、23のときで、
当時5,6歳だった弟とふたりで、植物園に行った帰りに寄った。
その時、初めておもちゃの方を買った。
トミカで、弟は黄色いカブを選んだような記憶がある。

それから、切手収集が趣味の少年のようには熱心でないながらも、
切手のことは好きなままでいて、
東京へ出かけたときには、目白の「切手の博物館」を訪ねたりもした。
笑いの切手、だったかの展示があって、
ありえない向きに腕が曲がってる切手、とか、そんなのを見て、
大変満足して帰った。

前に載せた、切手のなかで、
10円のほおじろ  は、そのときに、
博物館内のお店で購入した。

わたしはたぶん、ユリヤ商会のじいちゃん込みで、切手が好きなんだと思う。

じいちゃんの年齢を考えると、かなり危ういとはおもうのだけど、
なんとなく、まだありそうな気がするので、今度、またユリヤ商会を訪ねようと思う。

それに、つらいけど入院しているうちの、わたしのじいちゃんにも会いに行かないと。