「コオロギラン、ほおじろ、うさぎ。」
2015/09/03 木曜日
退職から2年弱。
やっと、初めて履歴書を書き上げ、投かんした。
どうなるだろう。
夕飯のあと、なんだか、
炊きたてのカスタードを、どんぶり鉢にこんもり盛って、スプーンで食べたい、という気持ちになった。
スプーンていうか、匙って言いたい気分で。
パン屋に勤めていた時、カスタード炊き係だった。
もちろん、他にも沢山仕事はあったけど、任されたもののなかで、一番頑張って取り組んだと思う。
丸8年前、かな、大学を卒業してから、小さなパン屋の見習いになった。
そういえば、この時パン屋の就職祝いにと、母が買ってくれたデジタル電波式目覚まし時計の電池が、つい数日前に切れた。
途中で電池を取り替えたのか記憶がない。
8年も持ったりするものだろうか。
まあ、それで、見習いになったはいいけれど、なかなか作る方は担当させてもらえない中で、
朝、デニッシュ生地のものの発酵具合を確かめ、釜に入れる、出す、の焼成と、
夕刻、隙を見計らってカスタードを炊くのは、わたしの数少ない製造担当業務だった。
あとは、パンを並べたり、レジを打ったり、卸販売分の準備をしたり。
ドイツパンも売ってる店で、焼き色は濃く、重さはどっしり、が信条な感じで、そういうところが好きで門を叩いたのだった。
カスタードも、あまり甘くなく、たまごたっぷりで硬め。滋養を感じるものだった。
片手鍋の、銅鍋で炊くのだけど、とにかく重い鍋だった。
配合や、作り方の詳細はすっかり忘れてしまったけど、
火からおろすタイミングは覚えてる。
よくよく木べらで混ぜながら、注意深く鍋のふちを観察していると、
ある地点で、鍋肌からクリームが浮き上がるようになる。
そこで、すかさず、鍋をひっくり返し、ぱこっ、という感じで、バットに落とす。
冷めないうちに、表面にぴったりとラップをはわせて、その上から蓋をする。
ラップは、結露防止のため。
鍋肌にまったくクリームを残さず、バットに移すことに、全力をそそいだ。楽しかった。
あの、栄養たっぷり!みたいなカスタードを、どんぶり鉢で膝に抱えて、大きな匙ですくって食べたい。
もうたぶん、鍋からクリームをバットに美しく移すことはできないけど、
自分で作らない限りは、この夢叶える術はなさそうだから、
またちょっと、がんばってやってみようかな、なんて、言うて、
きみ、ほかにやらんなんこといっぱいあるやろ。
はい…。